2025年8月山の子塾キャンプ<前編>
2025年8月下旬に、奈良県内の子供キャンプにクラームを連れて行った。経緯と、キャンプ後のクラームの劇的な変化、及び合間合間に知恵を絞ってクラームに声かけしたことなどを記録してみる。
【2025年4月】奈良県の空中の村でヒッポファミリークラブのキャンプに参加。
・山の中の暮らしを私は"思い出す"感覚だった。山道の歩き方、自然の空気の味、水辺の大きな岩の上の歩き方など。それは私が小学生の頃、母の実家に毎年夏休みに通った時に身につけた感覚。
・はたと気付いた。クラームはこの感覚を持っていないのか。危ういと思った。惜しいと思った。そう感じ始めていたキャンプ最中に、奈良のヒッポメンバーNが月に一度山の中で子供達のためのデイキャンプ活動を開催していることを偶然に知り、Nにぜひクラームをお世話になりたいと思った。
【2025年5〜7月】キャンプに行く見通しを立てる。
・自宅からキャンプ会場まで電車と車で9時間? 果てしなく遠く感じるけれど、道筋をあれこれ候補を考え続けていて、そして幸運なことに途中から合流して車で連れて行ってくれると言うヒッポメンバーBと巡り逢えた。
・毎月開催される日帰りのキャンプのお知らせをジリジリと焦がれる思いで過ごし、とうとう8月は1泊2日の日程が発表され、会社の休みを取る算段を付けて申し込みをした。ただ、時間をかけて迷った末、今回は宿泊はせず、日帰りの参加とした。初回ということで、念の為親も同伴で宿泊させてくれるとNから譲歩案を頂いたけれど、初回はまずNたちにもクラームに慣れてもらうほうが良いだろうと思い、日帰りの参加にさせてもらった。
【2025年8月】いよいよキャンプが近づいてきた。でもその前の準備。
・川遊びもある。山の中も歩く。ちょっとした装備が必要になる。
まずライフジャケットは、夫に相談して、結論は"良いものを買う"に至る。メーカーはモンベルに絞り、子供用のラインナップを吟味。微妙に身長がSとMの真ん中にあるクラーム。安い買い物ではない、というのと、命を守る大切なものだから、という理由で、わざわざ最寄り店に問い合わせ、在庫を確保してもらったのち、会社と保育園を早退して店舗に出向いて試着して、店員さんに寸法を合わせて見立ててもらった上でMサイズを購入した。
この時気を使ったことが、クラームのライフジャケットへの抵抗感を極力発生しないようにすることだ。予めクラームに写真を見せて好きな色を選んでもらっておいた。そして店舗に行く前に何度も「水の中に入る時に、命を守ってくれる大事なものだよ。着たらかっこいいよ」「クラームの一番好きな色のものを買うよ」などと気分が上がるような声かけをして事前準備した。店舗に到着するなり、自転車が引くバギーに試乗したりと注意が散らかって走り回るクラームを留めるのが大変だったけど、なんとか試着はそこまで嫌がらず無事終了した。
勤務時間が短くなった分、自分の首は締まるけれど、ライフジャケットといった(我が家にとって)ちょっとした大きな買い物をしっかり検討し尽くした、という達成感があり、また、これでしばらく(数年?)使いまわせることに安堵した。
余談で、この時の店長さんの対応が素晴らしく感動したので、モンベルの有料会員に即時入会した私。これからも良い品物を永く使わせて頂こうと思った。
・私服の方も買い揃える。アカチャンホンポに行って、夏に過ごしやすい素材(吸水速乾など)のTシャツを複数枚や、雨天でも活動できそうな野外用ズボンなどを選んで購入。※しかし、いずれも素材が綿ではなく特殊なもので肌触りが普段と違うという理由で、クラームはその後一度も着てくれなかった。ライフジャケットと比べて事前準備不足の影響が顕著だった。
・非常食(カップ麺)も、一体どんなものが良いだろうと迷っていたところ、アカチャンホンポにアンパンマンのカップ麺が売られていたので即決。
【2025年8月24日】いよいよキャンプへ出発。まずは前泊。
・新幹線で名古屋へ。そこからローカル線でBの最寄り駅へ。そしてそこから車で2時間かけて三重県のBのご実家へ。そのタイミングでクラームのサンダルを忘れたことに気づく。Bに色々調べてもらって靴を扱っているお店へ。(田舎なのでアクアシューズ取扱店を見つけ出すのにも一手間必要。)靴の試着も、落ち着きがないクラームと一緒に乗り越えるには菩薩のように?寛容な心が必要だった。
・Bのご厚意でご近所の川遊びが出来る場所へ連れて行ってもらった。クラームは初めて河原を歩き、水の生物を観察し、水の中の靴の重たさや、体のバランスの取り方などを一つ一つ、記憶しているようだった。
・全ての荷物が揃った。リュックと、大きなトートバッグの合計二つ。自分の荷物は自分で管理するキャンプだから、なるべくN達の手を煩わせたくないのだけれど、クラーム自身はまだ「ライフジャケット」などの単語をわかっていないので、引率者のNたちに必要な時に伝わるようにと、各カバンに大きなネームタグを付けて、そこにカバンの中身を全部書いておいた。
【2025年8月25日】とうとうやってきたキャンプ当日。
・Bの実家からキャンプ会場へ車で2時間。行きの車中、クラームには、「今日はお兄ちゃんお姉ちゃんと一緒に川遊びや山歩きをする日だよ。お母さんは夕方にお迎えに行くからね。お兄ちゃんお姉ちゃんと違う所にいたら、お母さんはクラームのこと見つけられなくなっちゃうから、みんなの手を離しちゃダメだよ。」と複数回、話しかけておいた。私自身もこのキャンプに行くのが初めてで、現地がどんな土地であるか分からなかったので、とにかくクラームが穴や崖から落っこちるといった、姿が見えなくなる状況は避けたいと考えていた。
・クラームは、母と離れるのを寂しく思う気持ちを抱いているようで、「いつ迎えに来るの」と何回か確認していた。"夕方"というのが、何時間後で、その"何時間"が、体感でどれくらいの時間なのかも、どちらもクラームは分からないから、「いつ迎えに来るの」という質問は、「本当にいつかは母親は自分の所に再び現れてくれるのか」を確認しているのだろうと思った。
一方で、今日これから出かけること自体は回避できないのだと悟っていたようで、泣き言も言わないし、抵抗もしていなかった。何が起こるのかまだイメージが湧かないから、楽しみにしている様子でもなかった。
・Nには、クラームの行動の特徴の中で、特にトラブルになりそうな部分(音声の指示内容を理解しにくいので視覚情報を盛り込んだ方が伝わりやすいこと。自分の不調をあまり表に出さないこと。興奮したときの唾吐き。)を事前に伝えておいた。
・現地に着いた。どういうタイミングでクラームと別れようかと思案しているところ、既に他の子どもたちが川遊びを始め出したので、有無を言わせずクラームを水着とライフジャケットに着替えさせ、川辺(崖を滑り降りるようにして辿り着ける場所)まで連れて行った。身近なところに一番年長者と見られるお姉ちゃんが居たので、Nが合流するまで、その子にクラームの手を握っていてもらいたい旨を伝えて私は崖を登り戻った。ここでクラームに「バイバイ」と別れの言葉を言うと、クラームが私にしがみついてくる可能性が頭をよぎったので、余計なことは言わずに姿を隠すことにした。
・崖上からクラーム達を見下ろしていると、クラームはもう私とBの姿を探す余裕もなく、インストラクターのSに手を引かれながら他の参加者の子をゆっくり追いかけている様子が窺えた。
・私はほんの少し、独り立ちする子どもを見送る親の気分に浸って、しんみりしてしまった。大きな怪我なく、夕方に会えますようにと天にお祈りした。
→キャンプが終わってからの話は<後編>をどうぞ。